「紫いろのちょうちょ」知っていますか?

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新生児の保育器やベッドにつけられた「紫いろのちょうちょ」。
これは、生まれてきた赤ちゃんには、本当は双子や三つ子など一緒に生まれてくるはずだった「きょうだい」がいたことを示すマーク。
イギリスで、ある1人の母親によって作り出された、「赤ちゃんの死」を示す意思表示の形です。

本当は「きょうだい」がいました

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イギリスのとある町で双子を妊娠したMillie Smithさん。
妊娠12週目になって、そのうちの1人が無脳症だと判明しました。

”双子のうちの1人は、生き延びられる見込みがないこと、たとえ生まれてこられても数秒の命しか期待できないことを医師から告げられました。”

—Millie Smith

2016年4月30日。この世に誕生した双子の赤ちゃん。
そのうちの1人、Skyeと名付けられた赤ちゃんは、数時間でその短い生涯に幕を下ろすことになりました。
そして双子の姉妹であるCallieちゃんはもうすぐ、生後8週目を迎えようとしています。(2016年6月22日現在)
いくつもの困難を覚悟したというCallieちゃんでしたが、現在は元気に過ごされているようです。

きっかけは

Callieちゃんと新生児病棟に入院中のこと。
同じ病棟には泣きわめく3組の双子がいたそうです。

”私が双子の赤ちゃんのうちの1人を亡くしたことを知らなかった方が、私に向かってこう言ったんです。

「あなたは双子じゃなくて本当にラッキーだったわね!」

その瞬間、私はただただその言葉に突き落とされました。”

—Millie Smith

もちろん、悪気があったわけではないことをMillieさんもわかっています。
「もし私の状況を後から知ったのなら、“悪い事をした”と思われるでしょう。」とMillieさんは続けます。
ただただ、その言葉がMillieさんを深く傷つけたのでした。
そして・・・

”私は、自分の赤ちゃんがなくなったということを知らせるための、小さなシンボルが必要だと思いました。”

—Millie Smith

男の子でも女の子でも使えて、保育器に貼れるもの—。
そんな想いで作られた小さな「紫いろのちょうちょ」のステッカーは、彼女の地元の病院で同じ境遇の母親向けに正式に採用されました。

私たちの目標は、「紫いろのちょうちょ」がイギリス中に広く知れ渡ることです。
ステッカーの代わりに、両親が自分たちで保育器やベッドの横に掲げられるカードとして病院に普及すること。
そしてまた、家の郵便受けに掲げることもできたらいいと思っています。

Millieさんは現在、この活動を広げ、遺族が深い悲しみと向き合うサポートをするためのSkye High財団を創設しました。

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赤ちゃんとの死別に救いの手を

赤ちゃんを亡くしたMillieさん、それでもこうして前を向いて生きていられるのは、赤ちゃんの死後も献身的に支えてくれた助産師さんの存在がありました。
彼女の助産師を務めたJo Bullさんは、死別を専門とした特別な助産師。
赤ちゃんの死後間もなく精神的なケアに取り組んでくれたそうです。

”私の仕事は生前もしくは生後すぐに亡くなった赤ちゃんの母親が、深い悲しみと向き合うことを助けること。
長い間、死産率は低下していません。そして全ての助産師が、両親を支えることができても、専門的なこと一つひとつに対応できるわけじゃない。
だけどイギリスでも、全ての病院で死別に特化した助産師がいるわけではありません。”

—Jo Bull

「死」を話すことはタブーなの?

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赤ちゃんが生まれてきて亡くなるまでだけでなく、どんなふうに看取ろうか送り出そうか。
そんなふうに対話を重ねるJoさんは「赤ちゃんの死」についてもっと話すことが必要だと訴えています。

話すことは、深い悲しみを乗り越えるための“始まり”であるにも関わらずタブーのように扱われている現状に、Millieさんもまた異を唱えています。
彼女の一番の目標は「赤ちゃんの死」について人々が話し始めるようになること。
そのために、自身で立ち上げたSkye High財団で集まった寄付金を「赤ちゃんの死」と向き合うためのカウンセラーを育てる病院へ寄付することを希望しています。

”赤ちゃんの死について口を閉ざす人が多く、看護師ですら何と言葉をかけたら良いのか、わからずにいます。
私の一番の誇りは、この活動によって「赤ちゃんの死」について、口にすることができる人が増えること。”

—Millie Smith

今日もMillieさんは、亡くなったSkyeちゃんの想いを胸に、同じ境遇の人々を支えるために活動しています。

引用元:「Butterfly effect- how a mother’s loss opened the conversation on baby death」from BBC News

あとがき

亡くなった人を思い出すこと、その人のことを話すこと。
それこそがその人が「そこにいた証」で「生きていた証」だ。

そんなふうに言われたことを思い出しました。
たとえ短くてもそこにあった命。絶対に、なかったことになんてできないんだから。
口に出すことで、残された家族が深い悲しみと対峙する力に、きっかけになったらいいなと感じさせられました。